Mikotoの活用 STEP4

Mikotoにボーンを仕込んで動かそう、という方のためのチュウトリアルです。STEP4はこだわりのセッティング編
テーマとか 備考
■はじめに
キャラクターに骨を仕込んだはいいが、イマイチ思うように変形してくれないことはよくあります。
ちょっとした調整で改善できる部分と、モデルデータ修正込みで調整する部分と、
どうやっても無理な部分があります。
その辺を把握しつつ(諦めるところは諦めつつ)工夫を重ねて綺麗変形を極めたいところ。
■きほん
・真っ直ぐ割り線を作って、真っ直ぐBOXを仕込む
・アンカーBOX交差領域は若干深め(太さと深さを同じくらいにするのが目安)
・ボーンのピボットとアンカー交差の中間点を同じ位置にする
・上記ピボットが関節部分の中央に来るようにする

■難易度低 膝とか足首とか
・1方向にしか曲がらない
・曲がりもねじりも範囲が小さい


■難易度高 肩関節と股関節
・前にも後ろにも横にも曲がる
・しかもねじり角度が大きい
■てきとーに設定してもかなり綺麗に曲がってくれる部分
Mikotoのsdef変形を使う分には、肘とか膝の単純変形はひっじょーに綺麗に曲がってくれます。



綺麗に曲がらないのは、軸やアンカーBOXの位置がずれている可能性が高いです。
既存骨組みセットにプロポーションの異なるキャラを読み込んだ場合などは、ちゃんと微調整しないとずれます。

■用語
sdef変形:曲げ部分がつぶれにくい、Mikotoの
変形アルゴリズム。スフィリカルデフォームの略称。
非常に優秀で、てきとーに組んでも綺麗に曲る。

一つの頂点に対して3つ以上のボーンには関連づけが
出来ないのが大きな欠点。


bdef変形:曲げ部分が普通につぶれる、Mikotoの
変形アルゴリズム。ボーンデフォームの略称。
sdef変形と異なり、どう頑張っても綺麗には曲がらない。
sdef設定をしたつもりでも、3こ以上のアンカーBOXが
重なっていると問答無用にbdef設定に切り替わる仕様。


プリーツスカートとか、アンカー密集が避けられない場合
割り切ってbdefで組んでしまう場合もあり。

■ちょっとした調整で改善できる部分(1)
上の(1)と重複する内容でもあるのですが、腕とか脚とか指といった筒状の部分に骨を仕込む場合、
なるべく筒の中心に骨を置くようにすると、変形が崩れにくくなります。
心がけとしては、人体としての整合性より、ボーン変形の綺麗さを優先する感じ。



胴体の骨(脊椎)は、実際には30個程度のパーツで出来ており、かつ背中側に寄っていますが
Mikotoボーンとしては2本か3本でしかも胴体中央部付近に仕込む方が綺麗に変形します。
背中側に仕込むと、腹側がへこみすぎて不自然になります。
■人体としての整合性よりも
実物の人体は、骨の周りに筋肉とか脂肪があって、
内側からの圧力を皮膚が押さえ込んでいます。

それに対して3DCGボーン変形は、骨が皮膚を
直接引っ張ります。変形時に各種補正をかけて
人体みたいに見えるようにしているだけで、
基本的な仕組みが生楽器と電子楽器の如く
異なります。

なので、肩の力を抜いて、電子楽器や3DCGで
表現できる範囲で頑張りましょ、てとこ。
■ボーンとアンカーBOX調整で改善できる部分(1)
ねじり耐性を上げるには、縦方向を多めに割り、且つアンカーBOXの交差領域を深めに取ってやります。
広い範囲でねじりを吸収することになるので、ひしゃげにくくなります。


■胴体とか
回転方向のひしゃげだけでいえば、胴体は
胸+腰の2ボーンの方が、胸+腹+腰の3ボーンより
綺麗に変形します。
3ボーンだと、交差範囲をあんまり深くできないので
ひしゃげがちになります。
■ねじり部分の割り列はなるべく直線的にする
ねじられる部分のアンカーBOXは複雑な形状よりもまっすぐな列にした方が、均等っぽく変形してくれます。


■具体例 タンクトップとパンツ
逆三角形のムキムキ筋肉な人でも、肋骨とか胸骨は涙滴形をしているので、
肋骨(動かない部分)と腕(動く部分)を等分割する感じに割ります。
また腰のあたりはパンツラインに沿って、動かない部分と動く部分を分けます。


■逆三角形シルエットは
ガタイの良い人は、鎖骨+肩胛骨と腕・胸・背中の筋肉がイイ感じに外側に張り出しているため、逆三角形シルエットになります。


■モデルデータ修正込みで調整する部分(2)
伸びる方向の曲げ耐性を上げるには、横方向を多めに割り、且つアンカーBOXの交差領域を
少しだけ深めに取り、曲げてもあんまりカクカクにならないようにします。


しかし縮む方向の曲げ耐性を上げるには、割りを多くしない方がひしゃげにくくなります。
アンカーBOXの交差領域も浅めの方が、ひしゃげの原因となる凸凹を含まなくなるので結果的に良いです。
理想的には直線一列のみ。2頂点間は絶対に直線になるので、決して凹まない。

■曲げとねじりの共存は
交差領域が深すぎると、曲げが思うように
いかない場合もあります。
交差が浅すぎると、ねじり方向で破綻します。


筒の太さと交差領域の深さが同じくらいが
落としどころっぽい。です



■モデルデータ修正込みで調整する部分(3)
そうはいっても、体全体のポリゴン数が結構多い場合、関節の内側だけローポリで直線的にすると
見映えが悪くなってしまうので、蛇腹ボール割りを使って、積極的にひしゃげを回避します。

曲げ中心からの距離の違いが、折りたたんだときの凸凹の原因になるので、なるべく中心からの距離を
揃えることで、折りたたまれても凸凹しないようにする、というもの。

■ボール割り
Mikotoのsdef変形は、関節を曲げたときに
曲げ中心から頂点までの距離の違いを吸収するよう
補正をかけているっぽいので、完全なボールだと
むしろ膨らみすぎます。


モデリング時に「ボールっぽく膨らませる」ことを
すこーし意識するくらいが程良い感じ。

■ボーン追加による曲げ角度の分散
肩に対して有効な方法です。上腕だけで腕を持ち上げるのではなく、鎖骨も入れることで、
それぞれの曲げ角度を小さくしてひしゃげにくくする方法。
試しに2004年前期型のボデヒ(鎖骨なし、背骨も2軸のみ)に現行アンカー(鎖骨あり、背骨3軸)を入れてみました。


胴体に対しては、上体部分のボーンを2本にすることで、ボーン1本あたりの曲げ角度を小さくするといふモノ。

■骨を増やすと言っても
本来の背骨はその10倍くらいあるのですが、
細かすぎるボーンを大量に使うと
交差領域が浅くなってしまい、
かえってひしゃげが目立ちます。


■再考 腕と足の可動範囲
ボーン変形で腕と足が鬼門となるのは、単純に可動範囲が広いからです。まづはその広さを再確認。
腕は鎖骨+肩関節によって前にも後ろにもけっこう動きますが、ねじりは前腕以外はそんなに回らず、
鎖骨の動きはやや小さめです。


脚は股関節自体が良く回り、スネや足首はそんなに回りません。前後の可動範囲は腕も脚もけっこう大きいです。

■副次的効果とか
肘〜手首まで少しずつねじると、
筋肉の流れっぽいウソ凸凹が生まれるのと、
ウソ関節で腕のしなりっぽい表現ができる。


ただし曲げすぎると骨折した人に。

■モデルデータ修正込みで調整する部分(4)
曲げ耐性を上げるのではなく、曲がる角度自体を小さくしてしまおうというアプローチ。
・肘や膝は逆関節側には曲がらないので、曲げマージンが無駄になる
・あらかじめ軽く曲げておけば、まっすぐ腕や脚を伸ばした状態から曲げるより変化が小さくなる
という思想。


ただMikotoでは縮む方向が縮むだけとゆーか、肉感的なぷにぷに押し出し感がないので、
お尻とかはちょっと不自然になります。上位ツールでは補正が効くようですが。
手足投げだしポウヅをベースにすると、肩は下げ方向に強く上げ方向にちょっと弱いです。

■Tスタンス
アルファベットのTのように両腕を伸ばしており、
脚は閉じ気味なのでこう呼ばれる。
3Dモデリングでは基本ポーズらしい。
もう少し脚を開いて大の字にしたモノを
大の字ポーズと呼ぶかどうかはその人次第?


■抱きつきポーズ
腕や脚を前に投げ出して、膝や肘も軽く曲げている。
抱きつくというほどではないが、大の字と区別する為
こう呼ぶ場合もある、という程度の方言。
腕を下げた状態はペンギンみたいなのでそう呼ぶ。


わたしは以前は抱きつきポウヅを使っていましたが
身長やバランスが把握しづらくて服とか作るとき
面倒だったり、MAXとかに持っていく時直交座標系
(縦横がはっきりしたポーズ)でないと使いにくかったり
ねじり方向にも若干弱い感じだったり欠点も多いので、
今は十字架ポウヅのみを使っています。

MAXは隆士郎のモノなので、自分ではいじれません。
MAX操作について指摘されるまでは
抱きつきポーズでした。
■ひしゃげ部分のごまかしと割り切り
蛇腹ボール割りやパンツライン割りをどれほど駆使しても、腕や脚を上げ下げすると潰れる部分が出ます。
1頂点に対するウェイトを同時に2個までしか設定できないMikotoでは、この辺が限界です。
しかし、隠れてしまうのなら、多少無理なひしゃげ方をしても見えないからいいや
割り切ることができます。真面目な話、コレはけっこー重要です。 アンカーBOXの交差範囲を敢えて狭くします。

■綺麗な変形に見えても
脚の付け根の前面と側面は、実際は
かなりひしゃげて胴体に食い込んでいますが、
折り曲げシワっぽい感じに見えなくもないです。
割り切り。
■鬼門の突破(1) 肩関節
複合ワザを駆使して、破綻が少なくなるようにしました。
・蛇腹ボール割りで曲げ耐性向上
・オーソドックスなT字ポウヅにより、腕を上下に(わりと)大きく動かせる
・鎖骨ボーンを入れることで、腕の上げ下げの曲げ角度の分散
・鎖骨アンカーBOXを深く交差させて、上腕のねじり耐性向上
・肩は交差領域を広めにして、伸びる方向の曲げ耐性向上
・脇の下は交差領域をちょっと狭くして、縮む方向の曲げ耐性向上。ひしゃげを隠す意味もあり。
・タンクトップとか肋骨ラインに沿った関節部分の面割りで、変形をより自然にする


モノはダウンロードペイヂにアップしてあります。
現状ではコレがうちで一番綺麗に変形します。

■注意点とか
汎用性を重視してTスタンスを用いていますが、
脇の下とかはあんまり色気をつけられません。
あと、ひしゃげない(ように見せる)ためには
あちこちをひねったりしています。

腕を下ろす時は外側にちょっとひねり、
腕を前に上げたときは内側にひねるとか。


法線マップやモーフィングあたりを併用しない限り
筋肉の凸凹とひしゃげ回避を同居させるのは
無理なのではないかなー、とか思います。
■鬼門の突破(2) 股関節
こちらも複合ワザを駆使して破綻を減らしました。
・蛇腹ボール割りで曲げ耐性向上
・前面と側面アンカーBOXの交差を浅くしてひしゃげを隠す
・お尻側アンカー交差を深くして、伸びる方向の曲げ耐性向上
・太腿アンカーBOXを深く交差させて、ねじり耐性向上
・骨盤ラインに沿った関節部分の面割りで、変形をより自然にする
・パンツラインに沿ったアンカー配置で、下着の布が引っ張られすぎないようにする




■注意点とか
・脚もまた、ひしゃげないようにひねっています。